2020 年 4 月に働き始めてから 6 年近く経過した。今年を振り返ってまとめておく。

正社員化

2025 年前半あたりは、生活に安定感がなくジャグリングをしているような感覚だった。学校の卒業、ビザの切り替え、インターンから正社員への移行という3つのイベントを同時に進めていた。結果的に 5 月から正社員として働き始めたが、計画通りには行かなかった。

会社の人事プロセスが大幅に遅延した。本来は 4 月から働き始める予定だったのに、一ヶ月以上遅れて 5 月になってしまった。これに関しては、本当にこちらには落ち度がなく、いつから働き始められるのか、なぜ手続きが遅延しているのか、一体今後どうなるのか、先行きが不透明な状態で待ち続けることとなり、精神的に辛かった。

去年働き始めたときも一悶着あって辛酸を嘗めたので、流石に二度目となると会社の人事制度に対する不信感を抱かざるを得ない。とはいえ、こういう理不尽な辛い目に会うのは、外国人として海外生活している以上、ある程度は仕方ないことだと思う。結果的に給料は上がって福利厚生も得られるようになったし、1.5 年間クビにならずにサバイブできたとポジティブに捉えることにしたい。

並列処理のデバッグ地獄

復帰してからは元のチームに合流し、最初の大きなプロジェクトは B-Tree のロックフリー実装だった。

実装はスムーズに行ったと思う。しかし、本当に苦労したのはその後、デバッグだった。印象に残っているのは高負荷時に稀に発生する並列処理のバグで、発見から解決まで 1-2 週間かかった。

当初は粒度の大きいテストで稀に発生するということしか分からず手がかりが掴めなかったが、バグを再現できる粒度の小さいテストを作っていって、地道に原因の候補を絞り込んでいった。範囲を絞り込んでもなお、ログを仕込むとそのせいで処理が遅くなってバグが再現しなくなるなど苦労したが、最終的には直感で仮説を立てて、原因の特定に至った。

マルチスレッドのバグは非常に厄介だという認識はあったが、まさにその深みにハマった。手がかりも見えず進捗も出ない状態で時間だけが経過していくのは精神的にも辛かったが、結局、決して諦めないという忍耐力で乗り切った。デバッグのノウハウも学び、エンジニアとして一歩成長できたと思う。

チーム異動で再スタート

9 月下旬から心機一転、別チームのプロジェクトに参加することになった。同じオフィス、同じコードベースではあったが、領域もチームメンバーもがらっと変わり、入社当初の新鮮な気持ちを思い出した。

初めはバグ修正やテスト環境の整備など地味な仕事から入り、やや退屈であったが、キャッチアップが進むにつれて設計や開発も直接担当することとなった。議論を交えつつロジックを考えて実装する過程には、やはりやりがいを感じる。ゼロからスタートして、チームメンバーの信用を得てコアの部分も触るようになった過程は良い経験だった。

成長に対する焦燥感

正直、今年を振り返って、自分がエンジニアとして満足行くほど成長できたかどうか、自信がない。エンジニアリングそのものではなく、カナダでの生活を安定させるためのサバイバルに時間とエネルギーを割いていたという自覚があるからだ。

正社員への切り替えでは疲弊したし、その後の引っ越しではやたらと書類を要求されてストレスがあったし、永住権獲得のためにフランス語の勉強も初めた。安定した生活基盤の構築を優先せざるを得ず、最も重要なエンジニアリングに関する勉強や創作に注力できなかったことをもどかしく感じた。

しかし、まあこれも、外国人として海外生活を送るうえでは仕方ないことだと思う。逸る気持ちはあるが、安心して生活できる状態にないと挑戦もできない。特にビザ関連では苦汁をなめてきたので、この問題は早く片付けてしまいたい。

私生活において苦労しつつもプロとしての仕事は継続し、一定の成果を上げ続けたことを、前向きに考えよう。今年の助走があってこそ、来年移行の飛躍があるはずだ。

来年の目標

来年取り組みたいこととして、大きなものは次の3つ。

  1. RDB の理解を深める
  2. AI の仕組みを学ぶ
  3. 役に立つものを作る

RDB について、今年 Database Design and Implementation を読んで、全体感を掴めたのは良かった。次はストレージエンジンへの理解を深める目的で 詳説 データーベース を読む予定だ。さらに本を読むだけでなく、論文も理解できるようになりたい。

AI について、今年は Claude Code を初めとするエージェントの登場により、プログラミングのあり方が大きく変わったことを実感した。単に流行りのツールを試して浅薄な活用をするだけでなく、内部の仕組みを理解したい。新技術の重要性を判断したり、未来予想をしたりするためには、ある程度中身を知っていないと限界があると思ったのだ。ゼロから作るDeep Learning シリーズと 大規模言語モデル入門 で基本的な事柄を一通り抑えたい。

誰かの役に立つものを作りたい。ソフトウェアエンジニアとして 6 年、なんとか一人前と言っていいくらいのスキルは身についてきたと思う。今後はそのスキルを使って、会社員としてだけでなく個人としても、なにか実際に有用なものを作って世に出したい。

結語

今年は忙しくしていた割にエンジニアとしての成長に対する焦りがあった。一方で、生活基盤は徐々に改善しているし、仕事でも着実に知見を積んで視野が広がってきたように感じる。来年はこのもどかしさをバネにして前に進みたい。