2020 年 4 月に働き始めてから 5 年が経った。本当は毎年 12 月に一年の振り返りをしようと思っていたのだが、今回はいろいろあって 4 月になってしまったので、2024 年 1 月から 2025 年の今までを対象として振り返りをして、今年の目標を書こうと思う。

海外就職

カナダに渡航して約 1 年半経った。最初の一年間は private college という日本の専門学校のようなところに通っていて、それからジョブオファーを得て働き始めた。 海外で働いてキャリアを積むというのがカナダに来た目的だったので、ようやくそのスタート地点に立てた。

この半年間、書類上は学生インターンとして就労していたのだが、正社員に昇格できることになった。クビにはされなかったし、パフォーマンス的に及第点は取れているのだとほっとした。しかし、一緒に働いている人々の支援がなければこう上手くはいかなかった。改めて自分が環境に恵まれていると思うし、チームのみんなには感謝したい。

渡航してから就活に関することは、ストーリー風にまとめて note で記事にした: ハンデを覆す運と戦略 - カナダ就活記

トロントへの引っ越し

カナダに渡航してから一年間はバンクーバーにいて、就職のためにトロントに引っ越してきた。距離は 3500km くらいあるらしく、札幌から那覇までの距離の約二倍とか。国内でもかなりの隔たりがある。馴染みのない土地で知り合い 0 人の状態から再スタートとなった。

しかし、これはもう慣れっこで、初めて東京に引っ越したときもバンクーバーに来たときもそうだった。内向的な自分でも、ありがたいことに人と交流する機会に恵まれて、知り合いも友達も少しできた。そういう経験があったので、今回は大して心配はしてなかった。

結局、家とオフィスとスーパーと図書館くらいで普段の生活は完結してしまって、職場以外ではほとんど人と会わない生活をしばらく送ってしまったが、ようやく余裕が出てきた。トロントでも知り合いの輪を広げていきたい。

オンライン動画講座

働き始めて少しした頃、動画講座を作ってくれないかという依頼をもらった。Fast campus というプラットフォームを運営している韓国の会社からだった。正直、最初は怪しんだが、話を聞いてみると本当のことのようだった。初めてのことで不安もあったが、これも経験になるかと思い受けてみることにした。

そうして SQL 講座 を作った。これは思った以上に大変だった。何もないところから自分でカリキュラムを作って、スライドを作成して、練習問題を考えて、撮影をした。編集は向こうに丸投げだったので、そこだけが救いだったが。

やはり締切があると精神的にもストレスが掛かる。結局一週間ほどあった冬休みはほぼ全てこの講座に費やし、その後も働きながら夜や土日に作業をし、すべてが終わったのは本格的に作業を始めてから一ヶ月以上後のことだった。

リリース後、苦労して作った割には何も反響がなく、やっぱりそんなに甘くないんだなぁと思った。報酬は講師料としてもらっていたので売れても売れなくても自分の取り分は変わらないのだが、少し残念だった。

とはいえ、会社勤めの給料以外でお金を稼いだのは初めてで、とてもいい経験だったと思う。

今後の目標

トロントで会社員をするという生活にも慣れてきて、正社員への移行も決まったところで、渡航当初の目的は達成しつつあるのだとふと思った。では、次はどうする?というのが問題だ。

改めて時間を取って、自分にとって大切なもの・達成したいものは何かと考えてみたところ、経済的に自立することと、幸せな家庭を持つことの二つが思い浮かんだ。

経済的自立と言う言葉はもはや使われすぎていてチープにも感じるが、具体的にどういう状態なのかと自分なりに考えてみたところ、住みたい場所に住める(衣食住)、レストランで値段を気にせず注文できる(娯楽)、そして、働かなくてもそれらの状況を維持できるという条件を思いついた。まとめると、したいことをお金のせいで諦めなくてよい、したくないことをお金のためにしなくてよい、ということ。

家庭を持つということについては完全にプライベートのことだが、近々結婚する予定で、家族との関わりも大事だなと思っている。

そして、これら二つを達成するためにキャリア上の成功が必要になる。手応えのある仕事ができたら楽しいし、お金も稼げる。ではそのために何が必要かということを考えて、技術・英語・永住権の三つにまとめて目標とした。

技術について

ソフトウェアエンジニアとしての技術を磨くこと。今は RDB(Relational Database) のストレージエンジンを開発するチームにいるので、それを自分の専門として深めていこうと思う。これまではこれと言った専門がなく悩んでいたが、ようやくはっきりした目標ができた。今はまだ分からないことだらけだが、論文を読んで OSS の実装と紐付けられるくらいになりたい。

ストレージエンジンを開発しているエンジニアそれほど多くないだろうし、こういう低レイヤーのニッチな分野で実力をつけることは、キャリア戦略としても悪くないのではないかと思う。

英語について

英語圏で生活する以上、あらゆることの基盤に英語がある。一応仕事をしてクビにならない程度にはなれたが、まだまだ苦労は絶えない。複数人の会話だとついて行けないことも多いし、ドラマや映画を字幕なしで楽しむことも難しい。

仕事でもコミュニケーション能力は重要だし、私生活においても英語で苦労したくない。今は特にリスニングに課題を感じていて、普段の生活の中で不自由しないくらいになりたいと思っている。

永住権について

キャリアにしろ家庭生活にしろ、カナダで安定して暮らすためには永住権が必須だと思う。英語の試験を受けたりして現状ではできるだけスコアを高めたが(カナダ永住権のための CELPIP CLB 9+ 攻略法)、それでもカットオフスコアを超えるかどうかぎりぎりのラインだ。

ここからさらに職歴を一年二年と積んでいけばスコアが上昇して、いずれは永住権を取ることができるだろうが、それだと時間が掛かる上にその間のビザを工面しなければならず、不安定だ。

そこで、ここからさらに能動的にスコアを伸ばすことができる、おそらく唯一の方法であるフランス語に目をつけた。カナダは英語とフランス語の両方が公用語であり、特に近年はフランス語話者が不足していることもあってか、フランス語の試験で一定以上のスコアを取ると永住権システムで大きな加点が得られる。

一から外国語を勉強するのは大変だろう。英語で苦労していると書いたばかりなのに正気かと思われるかもしれない。しかし、それをやれば永住権が取れるなら、つべこべ言わずにやればいいじゃないかとも思う。通常はハードに勉強しても半年から一年程度の時間が掛かるようだが、英語学習の経験を活かして効率化できないかなと楽観している。

これまで英語は「必要だ」という気持ちが強かった。特にカナダに来て以降はやらないといけないというプレッシャーもあったと思う。そういう状態で過ごしてきて英語学習に少し飽きてきたのもあるし、気分を変えて純粋に外国語を勉強することを楽しんでみたいと思う。

まあフランス語などやらずとも、現状のままで永住権が取れるのが一番楽なのは間違いないのだが、私はおそらく予測できない・不確実なものにストレスを感じやすいのだと思う。できることをやろう。

AI

具体的に今年の目標を挙げるわけではないが、AI はやはり無視できない。

ChatGPT がリリースされてからずっとブームのようになっているが、今もその勢いは衰えない。特にコーディングに AI を活用する流れが盛り上がっていると感じていて、自分もその流れに着いていきたいと思う。

エンジニアが職を奪われるのではないかと言った悲観的な見方もあるし、昨今の AI の凄まじい性能を見ていると危機感を持つのは当然だと思う。しかし、自分の立場が失われることに恐怖し続けるよりも、エンジニアとしてこの大きな変化を最前線で観測できることを強みに思うべきではないかと思い直した。一般人よりも、AI の強みも弱みも理解しやすいアドバンテージがあるはずだ。

最も、ハイプサイクルで言うところの幻滅期がそう遠くないうちに来るだろうし、何も考えずに熱狂して踊らされているのは良くないと思う。冷静に有用なものを取り入れて柔軟に変化していきたい。

結語

去年の今頃は今の生活を絶対に想像できなかった。トロントで RDB を開発しているなんて思わなかった。きっと次の一年も予想していなかったことが起こるのだと思う。人一倍苦労するだろうけど、人の何倍か努力して済むことなんだったら、それぐらいつべこべ言わずやれば良いと思っている。

これまでの数年間、なんとなく「すごい人」になりたいと思っていたのだが、すごいと言われるような能力も、結局何かを達成するための道具でしかないのと思った。英語やプログラミングができても、それだけではなんにもならない。その能力を使って、人の役に立つようなことをして初めて意味があるのではないか。今年は「ありがとう」と言われるようなことをしたい、と思えるようになっただけ、階段を一つ上った気がする。

今年もあと 75% もないが、これを振り返るときに少しでも進歩できているように努力しようと思う。