2023 年 7 月 26 日に日本からカナダのバンクーバーへ引っ越しました. 現在はプログラミングの専門学校に通っており, 一年後にエンジニアとして現地就職することを目標としています. 渡航から 1 か月以上経ち生活が落ち着いてきたこのタイミングで, 渡航前・渡航後に行った重要なことをまとめておきます. 将来バンクーバーに引っ越す方の参考になれば幸いです.
筆者のステータス
日本生まれ日本育ち, 大学卒業後 3 年間エンジニアとして働いた後, 海外就職を目標としてバンクーバーに渡航しました. 海外経験は数回の旅行程度で, 海外に特別な縁があったわけではありません. 普通に日本で生まれ育った私の視点から, 海外移住に必要だったことという視点で記事を書きます.
渡航前
最初は海外生活というと現実離れしたことのように思えていましたが, 実際の所必要なものは多くありません. ビザとお金です. それがあればどうにかなりますし, なければどうにもなりません.
ビザ
最重要はビザです. ビザとはその国への滞在に必要な許可証のことです. 海外生活においては何よりも重要なものです.
国によって形態は異なりますが, カナダには観光/学生/就労/ワーキングホリデービザなどの種類があります. 自分がどのビザを利用して渡航するかは非常に重要な選択であるため, 情報を集めた上で判断したほうが良いでしょう. 例えばワーキングホリデーは, 強力なものの人生で一度しか使えない切り札のようなビザで, うかつに使ってしまうと後々まで悪影響を及ぼす可能性があります.
私がバンクーバーを選んだ大きな理由の 1 つはビザが取得しやすかったからです. まず学生ビザで渡航し, 一年間学校に通った後, 1 年間就労可能な co-op という制度を使い就職を目指します. その後ワーキングホリデーを使ってさらに 1 年間就労期間を伸ばすこともできますし, 就職できていれば永住権 (≠ 市民権) 取得も見えてきます. もちろんビザの制度が変更される可能性もあるので計画通りに行くとは限りませんが, 今後 3 年間のビジョンが持てるのは悪くないと思っています.
疑問が生じるかも知れないので説明しておくと, エンジニアとしての経験があるにも拘らず学校に通うのは, ビザのためです. 授業で技術に関することを教えてほしいとは, 実はあまり思っていません(傲慢に聞こえるかも知れませんが, まあ多くのことは独学できますし, 授業で教えられることも限られているでしょうし). もちろん一年を無為に過ごすわけではなくその間に就職へ向けた準備をするつもりです. しかし学校に通う最大の目的は co-op とワーキングホリデーで二年間働ける状態を作ることであり, それくらいビザは重要だと考えています.
ちなみに, 私はある程度自分で下調べをした段階で Frog というエージェントに相談をしました. 信用すべきものを見極めるのは難しいので特定の団体を推奨するわけではないのですが, 私は Frog を通じて移住をして良かったと思っています. ビザやキャリア, 現地生活についてのサポートを受けられることに加え, コミュニティの存在も貴重です. 私はよく人に相談したり頼ったりすることを躊躇してしまうのですが, 重要な局面で必要な助けが得られるのならためらっている場合ではないと考えました. (今の所恩を受けっぱなしなので, 何かしらの形で報いたいと思っています. )
資金管理
生活するためには当然お金がなければいけません. 日本, 海外両方で資金を保持し移動させる手段が必要です.
一般的に, 海外移住すると日本でのお金の管理は非常に面倒になるという印象です.
まず海外に引っ越すと, 多くの銀行口座は解約しなければなりません. 私は, 日本の口座から日本の口座, 日本の口座から海外の口座に資金を移動させられるようにしたかったのですが, いくつか候補となる海外居住者向けのサービスを提供している銀行がありました. その中から 三菱 UFJ 銀行のグローバル・ダイレクト と SMBC 信託銀行 プレスティア という 2 つの銀行をメインで利用することにしました.
私のように海外にコネがなく単身で渡航する場合の他にも, 会社員として海外に駐在する場合, 海外在住の家族がいて同居する場合など, 海外移住といっても様々なケースが考えられます. 利用可能な銀行の候補は多くないので全て比較して自分のニーズに合うものを探したとしてもそれほど大変ではないでしょう. 他のサービスだと, 日本から海外への送金をするためには出国前に送金先の事前登録が必要という条件や, 日本国内での送金ができないという制約付きのものがありました.
さらに証券口座も銀行口座と似ていて, 基本的に口座は解約することになります. 一部の証券会社では口座を維持できますが, それでも日本株しか保持できない, 株の売買ができないなどの厳しい規制が掛かります.
しかし, 実は海外移住は自己申告なので, 銀行や証券会社には伝えないということも考えられますし, 実際にそうしている人もいるようです. 結局は個人の判断に委ねられるところですが, 私は無申告が露見して脱税とみなされて法に触れるなどと言った危険を冒したくなかったので, 涙をのんで律儀に申告しました.
銀行以外に FinTech の Wise というサービスも非常に有用です. 銀行と比較して国際送金を素早く安価に行うことができます. 最初はもう Wise だけでも良いのではと思ったくらい機能が充実していたのですが, Wise では口座に 100 万円までしか保持できない, 一度に 100 万円以上の国際送金はできないといった制約があり, やはり銀行口座も必要だという結論に達しました. 制限はあるものの便利なので, 渡航前にアカウントを作成しておくことをおすすめします.
その他
住民票, 保険, 年金など役所での手続き系も忘れずに行いましょう. 渡航後に行おうとすると非常に手間が掛かるでしょうから, 漏れがないようにしたいところです.
SIM カードは Phonebox や トクモバ と言ったサービスで渡航前に入手できます.
学生だと現地で公的な保険 MSP に加入する義務があるのですが, その手続きには時間が掛かるので繋ぎとして民間の保険に入っておきましょう.
渡航後
現地での生活において重要なものは以下の 3 つです.
- 身分証明書
- 資金
- 住居
身分証明書
頻繁に利用するわけではありませんが, やはり社会生活を送る上で身分証は必要です. 渡航時点で持っているはずのパスポートやビザが通用する場合は良いのですが, 現地政府から発行された身分証しか受け付けられないこともあります. 例えば銀行口座を開設する際には社会保険番号を提出しました (必須ではないという話も聞きましたが).
私が申請したのは以下の 3 つです.
- SIN: 社会保険番号
- BCID: カナダの British Columbia 州が発行する身分証
- BC Service Card: 保険証
申請後しばらくしてカードが送られてくる系の ID は住所が必要です. 住所が定まったら申請するか, (本当はいけないのかもしませんが) 住所を貸してくれる人や会社に頼みましょう.
資金管理
しばらくは Wise で生活可能です. 日本のクレジットカードも使えます. バンクーバーはキャッシュレスが進んでいるのでカードだけで生活できますが, 現金が必要になっても ATM で Wise の口座から引き出せば良いです. しかし, お金のやり取りやクレジットカードなどのために, やはり現地での口座を持っておいた方が良いでしょう.
カナダにはメガバンクが 5 つあり, 私はその内の 1 つ Scotiabank を選びました. 少し調べたところ, 銀行ごとに多少の違いはあるもののどれを選んでも問題ないと感じました. 住んでいる場所の近くに支店があるとか, 口座開設の予約が取りやすいとか, その程度の動機で選んでも良いでしょう.
口座開設に必要な書類はサイトに記載してあるか, なければ問い合わせるのが確実ですが, 私はパスポート/就労ビザ/SIN の 3 点で行けました. 銀行口座, デビットカード, クレジットカードを簡単に作成できました. ちなみに, 銀行口座の開設と聞くとややこしくて面倒そうなイメージを抱くかも知れませんが, 向こうは慣れているので心配不要です. 決まりきった作業ではほとんど喋らなくても必要な手続きをしてくれますし, もちろん質問したり聞き返したりしても嫌な顔はされません. バンクーバー全体に言えることですが, 移民が多い街だけあって移住者の対応に慣れている人が多いと感じます.
細かい注意を 1 つ. Wise は非常に便利ですが, バンクーバーの Suica 的存在である Compass Card には Wise カードが使えませんでした. 券売機でもオンラインでもだめでした. 理由は分かりませんが, とにかく重要な物事についてはバックアップ手段を用意しておくのが大切だと実感しました.
更に細かいですが Wise についてもう 1 つ. カナダで一般的な振り込み方法 e-Transfer は Wise でも利用可能です. e-Transfer は相手のメールアドレスさえ知っていれば送金できるという, 手軽な送金方法です. 例えば家賃の支払いや割り勘などで要求される可能性がありますが, 現地の口座がなくても Wise で可能です. 1 つだけ注意として, 送金を受け取るために必要な PIN コードを知らせるメールが相手のアドレスに届くので, 見落とさないようにしてもらいましょう.
住居
渡航して最初のうちはホームステイや Airbnb で一時的な滞在先を確保する人が多いらしいのですが, その後は安定した住所が必要になります. カナダでの部屋探しは日本とは異なっていて, 不動産会社を介さず個人間で直接取引をします. 部屋の募集がネット上の掲示板に投稿されているので, 良さそうなものを見つけたら投稿者に連絡を取り, 内見をして契約という流れです.
部屋探しのための掲示板サイトはいくつかありますが, 私が主に利用したのは jpcanada と kijiji です. 当然ながら良い部屋は人気ですぐに埋まってしまうので, 大変ですがこまめに投稿をチェックするしかありません. 売り手市場であるためか連絡をしても返信が返ってこないこともざらにありましたが, kijiji は比較的マイナーなプラットフォームであるおかげか返信率が高かったです.
私は 30 日間のホームステイを契約していて, 渡航から一週間後くらいに家探しを開始しました. 内見先の住所を間違って恥ずかしい思いをしたり, 家主から急に電話が掛かってきて焦ったりしましたが, 運良く一週間で次の部屋が決まりました. しかしその間精神的に落ち着かず, 常に部屋のことが頭の片隅にある状態でした. 次の住居が決まっていないという状態は初体験でしたが, 精神的な負荷を侮ってはいけません.
家探しは大変ですが, さらに悪いことに残念ながらトラブルもあるようです. 私の身近にも, 大家を騙った詐欺師にデポジット (=敷金) を取られてしまった方がいて, 入居するまでは気が抜けないと思っていました. この記事を書いている一週間前ほどにホームステイ先から引っ越しをしたのですが, ようやくバンクーバー生活にも一区切り付いたと感じ, この記事を書く余裕も持てました.
結語
渡航前と渡航後に分けて, 大事なことをまとめました. 全体像が把握できるようにしたいと考え詳細には立ち入りませんでしたが, この記事が将来海外に挑戦する方の参考になれば嬉しいです. バンクーバーにて機会があればお会いしましょう.
いろいろ書きはしたものの, 海外で生活するということ自体は実はそれほどハードルが高くないことに気づいてきました. 結局ビザとお金があればどうにかなります. 英語も大事ですが, 特にバンクーバーは移民が多いおかげか流暢でなくても問題ありません. そして日常的には, 積極的に人と関わろうとしなければ英語をほとんど使わずに生活することすら可能だと思います.
基本的な生活を送るのが簡単であるということは, 英語を上達させたりスキルを身に付けたりするためには特別な努力が必要ということでもあります. 引っ越しも終え生活が安定してきた今は, むしろいかに新しいことに挑戦するかということを考えています. これからも精進を続けます.